科研費が採択されると、必ずぶつかるのが研究データの管理です。実験データ・論文の根拠データ・解析コード・学会発表資料と、研究プロジェクトが動き出すたびにファイルの種類も量も増えます。「研究室のNASに置いているが、出張先からアクセスできない」「共同研究者とクラウドを使っているが、機密性の高いデータを外部サービスに置いていいか不安」という状況は、どの研究室も経験します。
即時オープンアクセス義務化と研究データ管理
統合イノベーション戦略推進会議は2024年2月、「学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた基本方針」を決定しました。2025年度から新たに公募が開始される科研費・AMED・JST等の競争的研究費を受給する場合、査読付き学術論文と根拠データを機関リポジトリ等の情報基盤へ即時掲載することが義務付けられています。
「根拠データ」とは、掲載ジャーナルの出版規程等において透明性・再現性確保の観点から公表を求められる研究データを指します。実験データや数値データをどこにどう保存・管理するか、研究室単位で仕組みを作っておかなければなりません。
内閣府の方針では、国立情報学研究所(NII)が提供するNII RDC(研究データ基盤)を通じてCiNii Research等で検索できる状態にすることを求めています。つまり、研究室のパソコンのローカルフォルダや個人のクラウドドライブに置いて終わりにはできない、ということです。
研究機関が扱うファイルの種類
研究室が日常的に扱うファイルを整理すると、大きく5つに分けられます。
実験・観測データ
測定値、センサーログ、顕微鏡画像、衛星データなど。1回の実験で数十GBになることもあります。データ収集直後にバックアップできる仕組みがなければ、機器トラブルで全てを失います。
論文・解析コード
Pythonスクリプト、RMarkdown、JupyterNotebook、LaTeXソース。どのバージョンのコードで何の結果を出したかを後から示せる状態が、再現性の証明になります。
論文原稿・学会発表資料
共著者が複数いる場合、「誰が最新版を持っているか」が混乱の元になります。ファイル名に「最終」「final」「rev3」が乱立する状態は、どの研究室でも一度は経験します。
機密性の高いデータ
個人情報を含む医学・社会学データ、企業との共同研究データ、特許出願前の技術情報。アクセスできる人を研究メンバーだけに限定する設定が必要です。
研究費関連書類
購入記録、領収書スキャン、実績報告書類。大学の事務部門と研究者の双方がアクセスできる場所に置いておくと、書類のやりとりが減ります。
GakuNin RDM と外部クラウドの関係
NIIが運営するGakuNin RDM(学認RDM)は、研究プロジェクト単位でデータを管理・共有するためのRDMサービスです。バージョン管理、アクセス制御、研究証跡の記録(タイムスタンプ)に対応しており、2026年現在、全国の大学・研究機関に提供されています。
GakuNin RDMは「拡張ストレージ」として外部クラウドストレージを接続できます。標準ストレージ(1ユーザー100GBまで)では容量が足りない大型プロジェクト、または情報セキュリティポリシー上データを特定の場所にしか置けない場合に、S3互換のクラウドストレージを接続して使います。
HStorageはS3互換APIを提供しているため、GakuNin RDMの拡張ストレージとして接続できます。大容量の実験データをHStorageに保管しながら、GakuNin RDM側でメタデータの管理と証跡記録を行う構成が可能です。
クラウドストレージで解決できること

共同研究チームとのファイル共有
国内外の複数の機関にまたがる共同研究では、メールでのファイル送付は限界があります。クラウドストレージに共有フォルダを設けて、アクセス権を共同研究者のアカウント単位で設定すれば、「最新版はどこにある?」「誰が最後に変更した?」という混乱が起きません。
HStorageではWebDAVやSFTPを使って、共同研究者それぞれに独立したアクセス権を設定できます。日本の大学A、海外の研究機関B、連携する民間企業Cがそれぞれ異なるフォルダにしかアクセスできない設定も、数分で構成できます。
バージョン管理と証跡
研究不正の疑いが生じたとき、研究者は「いつ、どのデータを、誰が修正したか」を示せなければなりません。クラウドストレージのバージョン履歴機能を使えば、ファイルの変更履歴と操作ログが残ります。管理者が指定した時点まで過去の状態に戻せます。
大容量データの受け渡し
MRI画像、衛星データ、大規模シミュレーション結果など、数十GB〜TBクラスのデータを研究者間でやりとりする場面では、メールや物理メディアは現実的ではありません。クラウドストレージへアップロードして共有リンクを送るか、直接SFTPで渡す方法が実用的です。
セキュリティ要件の整理

研究データのセキュリティ要件は、データの種類によって変わります。公開予定の数値データと、個人情報を含む医学データでは管理レベルが異なります。
アクセス制御: 研究プロジェクト参加者以外はアクセスできない設定が基本です。個人情報を含むデータは、フォルダ単位でアクセスユーザーを限定します。
暗号化: 通信経路のSSL/TLS暗号化に加え、HStorageのサーバーサイド暗号化(AES-256)でストレージ上でもデータを保護します。機密性の高いデータにはクライアントサイド暗号化も選択肢です。
監査ログ: 誰がいつどのファイルにアクセスしたかを記録します。不正アクセスの把握と、研究公正の証跡として使えます。
データ所在地: 一部の共同研究では、データを特定の国・地域のサーバーに置くことが契約条件になる場合があります。ストレージプロバイダーのデータセンター所在地は事前に確認してください。
アクセス権の設計例
研究プロジェクトのフォルダ構造とアクセス権の設計例です。
📁 プロジェクトXYZ/
📁 実験データ/
📁 2024年度/ ← 実験担当者のみ書き込み可、PI・共著者は閲覧のみ
📁 2025年度/
📁 解析コード/ ← 解析担当者と共著者が編集可
📁 論文原稿/ ← 全著者が編集可
📁 機密データ/ ← PIと指定研究者のみ(暗号化保存)
📁 対外共有/
📁 外部研究機関A/ ← 機関A担当者のみ
📁 民間企業B/ ← 企業B担当者のみ(契約期間中のみ有効)
📁 研究費書類/ ← PIと大学事務担当者のみ
共同研究先にデータを渡す際は、フォルダへの直接アクセス権を付与するか、有効期限とパスワードを設定した共有リンクを使うかを状況に応じて選びます。プロジェクト終了後に自動でアクセスが切れる有効期限設定は、データ管理の終了処理に便利です。
導入前に確認すること
情報セキュリティポリシーとの整合性: 多くの大学は外部クラウドサービスの利用手続きを定めています。研究推進部門や情報基盤センターに利用可否を確認してから導入を始めると、後からやり直すリスクがありません。
既存ストレージとの使い分け: GakuNin RDMを既に使っている場合は、HStorageをその拡張ストレージとして接続することで、RDMの証跡管理機能を維持しながら容量を追加できます。
データ移行計画: 研究室のNASや大学のファイルサーバーからデータを移行する前に、フォルダ構造とファイル名のルールを決めておきます。先にルールを決めてから移行すると、移行後の整理作業が不要になります。
研究データの管理は、研究者個人と所属機関の両方に課せられた義務です。研究公正の証明と公的資金の説明責任、この2つを同時に満たせる体制を、プロジェクトの開始時点から整えておく必要があります。HStorageの14日間無料トライアルで、実際の操作感を確かめてみてください。