クラウドプロバイダー1社にデータを全部預けている企業が、2026年に入って価格改定の直撃を受けている。AWS、Azure、Google Cloudはいずれも2025年末から2026年初頭にかけてストレージ料金を見直した。「安かったから選んだ」はずのクラウドが気づけば高くなっていた——その体験が、マルチクラウドストレージへの移行を後押ししている。
マルチクラウドストレージとは
複数のクラウドストレージサービスを意図的に使い分けるデータ管理の方針だ。Amazon S3、Azure Blob Storage、Google Cloud Storageといったパブリッククラウドに加え、HStorageのようなS3互換プライベートクラウドも組み合わせる。目的はひとつではない。コスト、可用性、コンプライアンス、処理速度——それぞれの要件に合ったストレージを使い分けることで、全体の最適解を出す。

企業がマルチクラウドを採用する5つの理由
1. ベンダーロックインを断ち切る
単一クラウドへの依存が続くと、プロバイダーの値上げを断れない。2025年9月にDropboxが法人プランを値上げした際、移行コストを嫌って大半の企業がそのまま契約更新を選んだ。乗り換えコストが高いほど、交渉の余地は消える。複数プロバイダーを使い分ける体制を作っておくと、「移行する」という選択肢が現実のものになる。
2. データ種別ごとにコストを下げる
すべてのデータを同じストレージに入れる必要はない。社内の業務ファイルは高速アクセス重視のストレージで管理し、動画アーカイブや年1回しか参照しない過去データは低コストのコールドストレージへ移す。HStorageのS3互換APIを使えば、rcloneなどのツールで他クラウドへの自動階層化を設定できる。
3. 障害時に業務を止めない
2025年9月のAWS us-east-1大規模障害では、単一リージョン・単一プロバイダーに依存していた国内企業の複数社がサービス停止に追い込まれた。セカンダリストレージを別プロバイダーに置いておけば、フェイルオーバーが機能する。3-2-1バックアップルール(3つのコピー・2種類のメディア・1つはオフサイト)の「オフサイト」を、別クラウドで実現するケースが増えている。
4. 国内データ保管の法的要件を満たす
個人情報保護法の改正指針では、個人データの第三国移転に一定の制約が課される。医療や金融など規制産業では、データの保存場所を日本国内に限定する要件が出てくる。国内データセンターを持つストレージサービス(HStorage含む)を一次保管場所に設定し、国際展開が必要なデータだけを海外クラウドへ転送する構成が現実的だ。
5. ワークロードに最適なサービスを当てる
AI・MLのトレーニングデータはGoogle Cloud(Vertex AI連携)、映像配信コンテンツはAmazon CloudFront経由のS3、社内ファイル共有はWebDAV対応のHStorageへ——ワークロードの特性に合わせてストレージを選ぶと、処理速度もコストも改善する。
マルチクラウドで必ず直面する3つの問題
エグレス料金がコストを押し上げる
クラウド間のデータ転送には料金が発生する。AWS S3から他クラウドへ1TB転送すると数千円から1万円超になるケースもある。設計段階で「データをどこで処理し、どこへ送るか」を決めておかないと、転送コストが月額請求を跳ね上げる。原則として、処理する場所とデータの置き場所を同じクラウドに寄せる設計が有効だ。
管理コンソールが分散して運用が重くなる
プロバイダーごとに管理画面が異なり、アクセス権限の設定方法も違う。ツールを整備しないと、担当者が複数のコンソールを行き来する作業だけで時間が消える。rcloneやCyberduckのような統合クライアント、またはHStorageのWebDAV機能を使ったネットワークドライブ接続で、操作を一元化できる。
セキュリティポリシーがバラバラになる
プロバイダーごとにIAM、暗号化、ログ仕様が異なるため、監査時に「このデータへのアクセスログはどこ?」が即答できない状況が起きる。MFA必須・最小権限・監査ログの定期取得をポリシー文書で明文化し、各プロバイダーで同じ基準を適用する。

HStorageをマルチクラウド構成に組み込む
HStorageはS3互換API・WebDAV・SFTPの3プロトコルに対応しているため、既存のツールをそのまま流用できる。
一次保存場所として使う
社内ファイルをHStorageに集約し、rcloneで定期的にAWS S3のGlacierへアーカイブ転送する。HStorageは国内データセンターに保管されるため、個人情報の国内保管要件もクリアできる。
WebDAVネットワークドライブとして使う
WindowsのネットワークドライブやmacOSのFinderからHStorageをマウントし、普通のフォルダと同じ感覚で操作する。ユーザーがクラウドを意識しないワークフローを作れる。
S3互換APIでコードを再利用する
既存のAWS SDK(Python boto3、Go aws-sdk)のエンドポイントをHStorageに向け直すだけで動く。アプリケーションの書き直しなしにHStorageへデータを流せる。
# rcloneでHStorageとAWS S3 Glacierを同期する例
rclone sync hstorage:company-files s3:archive-bucket/backup --transfers 8 --log-level INFO
導入前に確認する5つのポイント
- データの棚卸し — 何GB・何種類のデータが、どの頻度でアクセスされているかを把握する
- エグレス料金のシミュレーション — クラウド間転送を追加した場合のコスト増を試算する
- 国内保管要件の確認 — 扱うデータに規制要件があるか法務・コンプライアンスと確認する
- 管理ツールの選定 — rclone、Cyberduck、HStorage管理画面など、使うツールを絞り込む
- フェイルオーバー手順の演習 — 障害時に実際に切り替えられるか、本番前にテストする
HStorageを試す
HStorageは30日間の無料トライアルを提供している。S3互換APIとWebDAVに対応しており、既存のツールを使ったままマルチクラウド構成を試せる。国内保管が必要なデータの置き場所を探しているなら、まずトライアルで動作確認から始めるのが早い。