自動車メーカーの設計開発データは年間数百TBのペースで増え続けています。マツダが2025年に公表した事例では、総容量を4PBから10PBへ拡大して初めてテープ退避から脱却できたとあります。それほど自動車開発のデータ量は桁違いで、オンプレミスだけでは運用が追いつかなくなっています。この記事では、自動車・モビリティ業界でクラウドストレージを活用するための実践的な方法を解説します。
自動車業界のデータが急増している背景
「CASE」という言葉が示す通り、自動車はコネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化の波を同時に受けています。その結果、扱うデータの種類と量が急激に変わりました。
- CAD・シミュレーションデータ: 1車種の開発で生成される3Dモデルや解析データは数十TB規模になる
- ADAS/自動運転の学習データ: カメラ・LiDAR・レーダーの生データを収集・管理する必要がある
- テスト走行映像: 1日の走行テストで数TB規模のドライブレコーダー映像が発生する
- 電子制御ユニット(ECU)のログ: ソフトウェア定義車両(SDV)化に伴いECUのログデータが激増する
- 品質・認証書類: 型式認証に必要な書類や検査写真は法定で長期保管が求められる
ホンダがグローバルサプライヤーとのCADデータ共有で「データが送れなくて開発が進まない」という課題に直面したのは2010年代の話ですが、データ量が10倍以上に膨らんだ今、同じ問題はより深刻になっています。

CAD・設計データのクラウド管理
ファイルサイズと転送の現実
CATIAやNXで作成される1アセンブリファイルは数GB、プロジェクト全体では数TB規模です。メールはもちろん、一般的なファイル共有サービスでは容量制限と転送速度の両面で対応しきれません。
HStorageはS3互換APIを備えているため、マルチパートアップロードで大容量ファイルを効率よく転送できます。10GBのCATIAアセンブリでも途中で再開できるため、海外拠点や通信品質の不安定な環境でも安定して送信できます。
# rcloneでCADファイルをHStorageへ同期する例
rclone sync /mnt/cad-projects/vehicle-A hstorage:design-data/vehicle-A \
--transfers 4 \
--checksum \
--progress
バージョン管理と誤削除対策
設計ファイルは頻繁に改版されます。「最新版はどれか」「どの時点の形状か」という確認作業が膨大な工数を生む問題は多くのメーカーが抱えています。
HStorageでは共有リンクに有効期限と閲覧専用設定を組み合わせることで、特定バージョンのファイルを取引先や社内外のレビュアーに安全に配布できます。
テスト走行映像のアーカイブ
自動運転技術の開発では、プローブカーやテスト車両が収集する映像データをクラウドに集約して機械学習チームが活用するワークフローが標準になっています。1日の走行テストで生成されるデータは車両1台あたり2〜5TB規模です。
映像データはHStorageのS3互換エンドポイントに直接アップロードし、一定期間経過後はライフサイクルポリシーで自動削除または低コストアーカイブ層へ移行するように設定できます。
# テスト車両から走行映像を自動アップロードするスクリプト例
#!/bin/bash
DATE=$(date +%Y/%m/%d)
VEHICLE_ID="pv-001"
aws s3 sync /recordings/today \
s3://mobility-data/test-drive/${DATE}/${VEHICLE_ID}/ \
--endpoint-url https://s3.hstorage.io \
--storage-class STANDARD

サプライヤーとのファイル共有
国内外のサプライヤーへ設計図・部品仕様書を送る際、大容量ファイルの転送とアクセス制御という二つの壁があります。メールで送れるファイルサイズには上限があり、転送サービスを乱立させると相手企業のIT部門が管理を嫌がります。
HStorageの共有リンク機能を使うと、次の表のように送付先ごとに制限を変えて配布できます。
| 送付内容 | 設定 |
|---|---|
| 一次サプライヤーへの部品仕様書 | パスワード保護+ダウンロード回数制限 |
| 二次サプライヤーへの参照用図面 | 閲覧専用リンク+有効期限14日 |
| 監査機関への品質記録 | ZIP圧縮+パスワード共有 |
SFTP接続にも対応しているため、既存のPDMシステムや社内ネットワークドライブと連携するのに追加開発が要りません。
品質・認証書類の長期保管
型式認証書類や品質管理記録(IATF 16949準拠)は、製造終了後も最長15〜20年の保管を自動車メーカー各社の内部規程や道路運送車両法が求めます。スキャンデータをクラウドへ移行すれば、物理保管スペースのコストを削減しながら、どの拠点からも即座に書類を引き出せます。
HStorageでは権限ごとにフォルダ単位のアクセス制御が設定可能です。社内の品質部門は閲覧・編集、外部監査人には閲覧専用リンクを発行するだけで運用できます。
HStorageを自動車業界で活用するポイント
自動車業界の用途に照らすと、HStorageは次の点で既存サービスの代替あるいは補完として機能します。
- S3互換API: rclone・aws-cli・Boto3がそのまま動くため、既存スクリプトの書き直しが不要
- SFTP/WebDAV対応: PDMシステムや基幹システムへの組み込みに追加開発が要らない
- マルチパートアップロード: 数GBのCADファイルや数TBの映像データを途中から再開しながら転送できる
- 共有リンクの詳細設定: 有効期限・パスワード・ダウンロード回数を組み合わせてサプライヤー配布を管理できる
- 国内データセンター: データ所在地を国内に限定したい法令対応ニーズに応えられる
CADバックアップから試して、映像アーカイブ、サプライヤー連携へと範囲を広げる順番で導入すると、現場への影響を最小限に抑えられます。
プランや詳細機能についてはサービスサイトでご確認ください。