クラウドストレージを活用する際、Web ブラウザやアプリからのアップロードだけでなく、SFTP や WebDAV といったファイル転送プロトコルを使用することで、より効率的なファイル管理が可能になります。
しかし、「SFTP と WebDAV のどちらを使うべきか」という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
本記事では、SFTP と WebDAV の技術的な特徴を比較し、用途に応じた最適な選択ができるよう解説します。
SFTP とは

SFTP(SSH File Transfer Protocol)は、SSH(Secure Shell)プロトコル上で動作するファイル転送プロトコルです。1990年代後半に開発され、従来の FTP が持っていたセキュリティ上の問題を解決するために設計されました。
SFTP の技術的特徴
- 暗号化: SSH による強力な暗号化通信
- 認証方式: パスワード認証、公開鍵認証(秘密鍵認証)に対応
- ポート番号: 通常 22番ポート(HStorage では 49999番ポート)
- プロトコル: バイナリプロトコル
SFTP の最大の特徴は、公開鍵暗号方式による認証です。秘密鍵を持っている人だけがサーバーにアクセスできるため、パスワードの漏洩リスクを大幅に軽減できます。
WebDAV とは

WebDAV(Web-based Distributed Authoring and Versioning)は、HTTP プロトコルを拡張したファイル共有の標準規格です。1999年に RFC 2518 として標準化され、現在でも多くのクラウドストレージサービスで採用されています。
WebDAV の技術的特徴
- 暗号化: HTTPS(TLS)による暗号化通信
- 認証方式: Basic 認証、Digest 認証(ユーザー名 + パスワード)
- ポート番号: 443番ポート(HTTPS 標準ポート)
- プロトコル: HTTP ベースのテキストプロトコル
WebDAV の最大の特徴は、HTTP ベースで動作する点です。これにより、Web ブラウザと同じポート(443)を使用するため、多くのファイアウォール環境でも問題なく通信できます。
SFTP と WebDAV の詳細比較
両プロトコルの特徴を、様々な観点から比較してみましょう。
セキュリティ面での比較
| 項目 | SFTP | WebDAV |
|---|---|---|
| 通信暗号化 | SSH (AES-256等) | TLS 1.3 |
| 認証強度 | 秘密鍵認証(推奨) | パスワード認証 |
| 中間者攻撃対策 | ホスト鍵検証 | 証明書検証 |
| 認証情報の保護 | 鍵ファイルで管理 | パスワードを都度入力 |
セキュリティの観点では SFTP が優位です。秘密鍵認証を使用することで、パスワードがネットワーク上を流れることがなく、ブルートフォース攻撃に対しても強い耐性があります。
一方、WebDAV は TLS 1.3 による暗号化で十分なセキュリティを確保していますが、認証はパスワードベースとなるため、パスワード管理の重要性が増します。
使いやすさの比較
| 項目 | SFTP | WebDAV |
|---|---|---|
| OS標準サポート | なし(要クライアント) | Windows/macOS/Linux |
| 初期設定の手間 | やや複雑(鍵設定) | 簡単(URL入力のみ) |
| クライアントソフト | WinSCP, Cyberduck等 | OS標準機能で利用可能 |
| ドライブマウント | 要追加ソフト | 標準機能で対応 |
使いやすさでは WebDAV が優位です。Windows では「ネットワークドライブの割り当て」、macOS では「サーバへ接続」機能から、追加ソフトなしでクラウドストレージにアクセスできます。
SFTP は WinSCP や Cyberduck などの専用クライアントが必要ですが、これらのソフトウェアは高機能で、大量のファイル転送や自動化に適しています。
ネットワーク環境での比較
| 項目 | SFTP | WebDAV |
|---|---|---|
| 使用ポート | 22 (または任意ポート) | 443 (HTTPS) |
| ファイアウォール通過 | 制限される場合あり | 通過しやすい |
| プロキシ対応 | 対応困難 | HTTP プロキシ対応 |
| 企業ネットワーク | 制限が多い | 制限されにくい |
企業のファイアウォール環境では WebDAV が優位です。HTTPS と同じポート 443 を使用するため、多くの企業ネットワークで問題なく利用できます。
SFTP は SSH ポート(22番)を使用するため、セキュリティポリシーの厳しい企業では制限されている場合があります。HStorage では 49999番ポートを使用しており、この点は事前に確認が必要です。
パフォーマンスの比較
| 項目 | SFTP | WebDAV |
|---|---|---|
| 転送効率 | 高い(バイナリプロトコル) | やや低い(HTTP オーバーヘッド) |
| 大量ファイル転送 | 効率的 | オーバーヘッドあり |
| 再開機能 | 対応 | 対応(サーバー依存) |
| 並列転送 | クライアント依存 | クライアント依存 |
大量ファイルの転送では SFTP が優位です。SFTP はバイナリプロトコルであり、HTTP のようなテキストベースのオーバーヘッドがありません。
ただし、通常の利用シーンでは体感できるほどの差はなく、数 GB 程度のファイル転送であれば両者とも十分な速度が出ます。
ユースケース別おすすめ
SFTP がおすすめなケース
-
自動化・スクリプト連携が必要な場合
- バッチ処理でのファイルアップロード
- CI/CD パイプラインとの連携
- 定期的なバックアップ処理
-
高いセキュリティが求められる場合
- 機密性の高いドキュメントの転送
- 金融・医療などの規制産業
- 秘密鍵による厳格な認証が必要な場合
-
大量のファイルを効率的に転送したい場合
- 数百〜数千ファイルの一括アップロード
- 大容量ファイルの転送
- ディレクトリ構造を維持した転送
WebDAV がおすすめなケース
-
手軽にファイルにアクセスしたい場合
- OS 標準機能でクラウドストレージをマウント
- 追加ソフトのインストールが制限された環境
- 複数の OS を併用している場合
-
企業のファイアウォール環境で利用する場合
- 22番ポートが制限されている環境
- プロキシ経由でのアクセスが必要な場合
- IT 部門の承認が必要な環境
-
複数のデバイスから簡単にアクセスしたい場合
- デスクトップ PC と ノート PC での共有
- チームメンバーとのファイル共有
- 一時的な外部アクセスが必要な場合
HStorage での活用方法
HStorage では、ビジネスプランまたは買い切りプランで SFTP と WebDAV の両方をご利用いただけます。
HStorage での SFTP 利用
HStorage の SFTP は秘密鍵認証を採用しています。ダッシュボードから秘密鍵をダウンロードし、WinSCP や Cyberduck などのクライアントに設定することで利用できます。
詳しい設定方法は「FTPクライアントに対応しました」の記事をご参照ください。
HStorage での WebDAV 利用
HStorage の WebDAV は HTTPS + パスワード認証を採用しています。ダッシュボードに表示される URL、ユーザー名、パスワードを使用して、OS 標準機能から接続できます。
詳しい設定方法は「WebDAV に対応しました」の記事をご参照ください。
拡張パーミッション機能
HStorage では、セキュリティの観点から SFTP/WebDAV 経由でのファイル操作はデフォルトで一部制限されています(リネーム、上書き、ディレクトリ削除など)。
「ダッシュボード -> 設定画面」から拡張パーミッションを有効にすると、これらの操作が可能になります。
| 操作 | デフォルト | 拡張パーミッション有効時 |
|---|---|---|
| ファイル・ディレクトリのリネーム | ❌ | ✅ |
| ファイルの上書きアップロード | ❌ | ✅ |
| ディレクトリの削除 | ❌ | ✅ |
| ファイルのタイムスタンプ変更 | ❌ | ✅ |
⚠️ 注意: 拡張パーミッションを有効にすると、ランサムウェア等による攻撃でファイルが改ざん・削除されるリスクが高まります。利便性とセキュリティのバランスを考慮のうえ、お客様ご自身の判断でご利用ください。
両方を使い分けるメリット
HStorage では同じアカウントで SFTP と WebDAV の両方を利用できるため、状況に応じた使い分けが可能です。
- 日常的なファイル管理: WebDAV でドライブとしてマウント
- 大量アップロード: SFTP で効率的に転送
- 自動バックアップ: SFTP でスクリプト化
企業がファイル転送プロトコルを選定する際のポイント
企業でクラウドストレージの導入を検討する際、ファイル転送プロトコルの選定は重要な検討事項です。
セキュリティポリシーとの整合性
自社のセキュリティポリシーに合致するプロトコルを選択することが重要です。特に以下の点を確認しましょう。
- 認証方式の要件(多要素認証、証明書認証など)
- 通信の暗号化要件
- アクセスログの取得要件
既存インフラとの互換性
既存のネットワーク環境やツールとの互換性も重要です。
- ファイアウォールのポート開放可否
- プロキシサーバーの対応状況
- 既存の運用スクリプトとの連携
従業員のリテラシー
従業員が無理なく使えるプロトコルを選択することで、シャドー IT のリスクを軽減できます。
まとめ
SFTP と WebDAV は、それぞれ異なる強みを持つファイル転送プロトコルです。
| 観点 | SFTP | WebDAV |
|---|---|---|
| セキュリティ | ◎ 秘密鍵認証 | ○ パスワード認証 |
| 使いやすさ | △ 要クライアント | ◎ OS標準対応 |
| ファイアウォール | △ 制限される場合あり | ◎ 通過しやすい |
| 自動化 | ◎ スクリプト連携◎ | ○ 対応可能 |
| 拡張パーミッション | ◎ 対応(共通設定) | ◎ 対応(共通設定) |
SFTP は高いセキュリティと自動化への適性が強みで、開発者やシステム管理者に適しています。
WebDAV は手軽さとファイアウォール通過性が強みで、一般ユーザーや企業環境での利用に適しています。
HStorage では両方のプロトコルに対応しているため、用途に応じて最適な方法をお選びいただけます。まだお試しでない方は、ぜひビジネスプランで両プロトコルをご体験ください。
ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。